「諸概念の迷宮(Things got frantic)」用語集

本編で頻繁に使うロジックと関連用語のまとめ。

【高校数学】「大数の弱法則」から「オイラーの公式」を経て「ベイズ推定」へ。

①「大数の弱法則 (WLLN: Weak Law of Large Numbers) 」の提唱者たるヤコブ・ベルヌーイ(Jakob Bernoulli、1654年〜1705年)とその弟子レオンハルト・オイラーLeonhard Euler, 1707年〜1783年)は、「各出目の出現確率が均等に1/6の六面体サイコロを6回降って特定の目が1回も出ない確率」なる概念を数式的に抽象化した(1-1/N)^Nの式を通じてネイピア数1/e=0.3678794の概念に到達した。
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  • 大数の弱法則 (WLLN: Weak Law of Large Numbers) …独立同分布/独立同一分布に従う可積分な確率変数の無限列X1, X2,…Xnとその平均μが与えられた時、標本平均(Sample mean(X1, X2,…Xn)/nただしn>=1) のとる値が平均μの近傍から外れる確率は、十分大きなnを取れば、いくらでも小さくできるとする考え方。

  • 独立同分布/独立同一分布independent and identically distributed; IID, i.i.d., iid)…確率論と統計学において、確率変数の列やその他の系が、それぞれの確率変数が他の確率変数と同じ確率分布を持ち、かつ、それぞれ互いに独立している場合をいう。例えば6面体サイコロで各出目の確率は毎回1/6であり、その前後の出目の影響を受けない(メモリレス性)。「独立同分布/独立同一分布」なる確率分布自体が存在する訳ではない点に注意。

  • 積分integrable)…ニュートンが17世紀にケプラー問題を解いて微分積分学古典力学が発祥して以降追求されてきた「求積法で完全に解ける」範囲。

    例えば「物差しの目盛は収束などしてはいけない」ルールに従って指数・対数関数や三角関数を「収束しない基準」として採用したフーリエ解析Fourier analysis)におけるフーリエ展開Fourier expansion)/フーリエ逆展開Fourier inverse expansion)は、その立ち場故に指数・対数関数や三角関数そのものを直接扱えない(決して収束しないからこそ正負の目盛りが無限に続き微積分演算の対象となり得ない)。あえてこの制約を破ろうとしたのがラプラス変換となる。

  • 確率変数random variable, aleatory variable, stochastic variable)…ある確率のセットが変数として存在し、しかも概ねそうした確率の合計が1となる様に正規化(normalization)された状態モデルを指す。例えばコインの出目は{表,裏}のいずれかで、それぞれの目が出る確率は1/2(P(X)=1/2(x=0,1))。6面体サイコロを投げて出る目は{1, 2, 3, 4, 5, 6}のいずれかで、それぞれの目が出る確率は1/6(P(X)=1/6(x=1,2,3,4,5,6))。3の目が出る確率は1/6(P(X=3)=1/6,P(3)=1/6)。
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    一般化するとP(X)=1/N(X=1,2,3…N)となり、ここから先に述べた(1-1/N)^N各出目の出現確率が均等に1/NのN面体サイコロをN回降って特定の目が1回も出ない確率)なる式も導出されたのである。

②さらにベルヌーイとオイラーは「一年で元金が倍になる夢の金融商品において、複利計算でさらに利益を上げられる上限」なる概念を数式的に抽象化した(1+1/N)^Nの式の究極解としてネイピア数e=2.718282そのものにも到達。

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③両者が逆数関係にあった事から既存の対数関数論を敷衍する形で自然指数関数(Natural exponential functiony=e^xと自然対数関数(Natural logarithm functionx=e^yあるいはy=log(x)を発案した。

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 ④ところで等速円運動をそれぞれX軸とY軸より観測すると2つの単振動(位相が90度ズレたCos波とSin波)が得られ、それを再構成する形で円が描ける。

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⑤同様に(奇関数と偶関数が無限に連続する)自然指数・対数関数と(偶関数を実数に、奇関数を虚数に割り当てる虚数指数(Imaginary exponent)と(実数をX軸に割り振り、虚数をY軸に割り振る複素平面独Komplexe Zahlenebene, 英complex plane)を組み合わせても単位円(半径1の円弧)が現れる。有名なオイラーの公式e^θi=cos(θ)+sin(θi)とはこれ。

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統計言語Rによる3D表示

library(rgl)

#complex_plane_z=時間軸t
complex_plane_z<-seq(-3*pi,3*pi,length=180)
#complex_plane_x=実数軸(Real number)
complex_plane_x<-cos(complex_plane_z)
#complex_plane_y=虚数軸(Imaginary number)
complex_plane_y<-sin(complex_plane_z)
#グラフ描写
plot3d(complex_plane_x,complex_plane_y,complex_plane_z) 
movie3d(spin3d(axis=c(0,0,1),rpm=5),duration=10,fps=25,movie="~/Desktop/test")

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⑥ところでe^θi=cos(θ)+sin(θi)が成立するという事は上掲の「大数の弱法則エビデンス」の部分もe^θi=(1±θi/N)^Nの形に拡張される。すなわち「あらゆる運動は、究極的には理論上単位円の円周上を無限に旋回し続ける1次元運動に還元され得るが、どれほど観測制度が引き上げられ様と完全に理論値と一致する事はない」状況を意味している。

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  • こうした測定精度の急激な上がり方は、もしかしたら人類の地理感覚が「周囲を巨大海棲生物が徘徊する滝に囲まれた円盤」から「隙間なく測量が終わった地球儀」にアップグレードされていく過程に対応しているのかもしれない。

  • 数学史上は英国牧師トーマス・ベイズThomas Bayes、1701年〜1761年)が最初にこうした「サイコロの出目のそれまでの集計結果が理論値に近づいていく過程」そのものに注目したとされている。彼の死後、リチャード・プライスが発表(Bayes & Price 1763)したのが画期と目されている。いわゆる「ベイズの定理Bayes' theorem)」。この時代らしく(当時大陸で流行していた機械的宇宙論に対抗する神学的反論という意味合いも込められていたが、ただしその内容自体は現代数学で言うところの「(可能世界の改変を伴う条件付き確率conditional probability)」論の範囲を一歩も出ない。

こう考え合わせて行くと、上掲の拡張ベルヌーイ過程e^θi=(1±θi/N)^Nが暗示する世界観を熟知した(だから直交座標系と極座標系を往復するラプラス変換の基礎が固められたピエール=シモン・ラプラスPierre-Simon Laplace, 1749年〜1827年)が「ラプラスの悪魔Laplace's demon)」概念の提唱者にして「(確率変数の出力が永延に期待値に到達しないベイズ推定理論」の実質的完成者となったのは決っして偶然ではなさそうなのですね。
*ただしやがてラプラス自身の関心がこの方面から離れたせいで、この方面についての思索の記録は思ったほどちゃんとした形で残ってない。