「諸概念の迷宮(Things got frantic)」用語集

本編で頻繁に使うロジックと関連用語のまとめ。

【ハードボイルド文学論】Wikipediaの定義への注釈を試みる。

こういう定義もある様ですが、どうも納得がいきません。

まずは「基本中の基本」の確認とそこからの逸脱可能性について探っていきましょう。

ハードボイルド(hardboiled)は、文芸用語としては、暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体をいう。アーネスト・ヘミングウェイの作風などが一例である。
*ハードボイルド文学とは本質的にダーウィン型進化論的マルコフ連鎖過程の軌跡追跡」である。つまり例えば「平凡/日常的な初期状態」から「非平凡/非日常的な(少なくとも物語終焉時点における)最終段階」への、あるいはその真逆の遷移過程の面白さを重視する。

*その立場から一義的にヘミングウェイキリマンジャロの雪(The Snows of Kilimanjaro,原作1936年,映画化1952年)」に登場する「山頂の豹の亡骸」の如き「初期状態が容易には想像し得ない最終地点への到達」も、安部公房砂の女(1962年)」における「(初期状態の異常な設定からは想像だに出来ない様な)平凡な日常への最終収束/永劫回帰」を面白がると想定される。前者としてはイエズス会が日本には「マリア観音」、メキシコには「グアダルーペの聖母」、アメリカには「ヘイズコード」を残してきた歴史的過程、メキシコ「死者の日」に骸骨と踊る「死神ここなちゃん」の意匠の成立過程などが…

後者としては我々の日常に存在する「お好み焼き」「コーヒー」などへの到達過程に取材した歴史ミステリー(支倉凍砂狼と香辛料」「狼と羊皮紙」の様な経済ファンタジーもこれに含む )が念頭に浮かぶが、それだけでは不思議なまでに我々が共通して抱く「ハードボイルド」のイメージと合致しない。

  1. ミステリの分野のうち、従来あった思索型の探偵に対して、行動的でハードボイルドな性格の探偵を登場させ、そういった探偵役の行動を描くことを主眼とした作風を表す用語として定着した。ここでいう「ハードボイルド」とは元来、ゆで卵などが固くゆでられた状態を指し転じて感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的・肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す。
    *ここからニーチェいうところの精神超人の概念との関連が生じる。

  2. 今日ではミステリのサブジャンルとして扱われるのが一般的だが、サスペンスや一般小説など主人公をハードボイルド風の文体で描く作品は他のジャンルにもある。また、ミステリにおいては主人公は私立探偵とするものが一般的だが、必ずしも主人公が私立探偵であることがハードボイルドの条件ではない。特に私立探偵という職業が一般的ではない日本では、小説家(河野典生『殺意という名の家畜』)や非番の日の刑事(矢作俊彦『リンゴォ・キッドの休日』)など、さまざまな職業が探偵役として提案されている。
    マーティン・スコセッシは「タクシー・ドライバー(1976年)」と 遠藤周作「沈黙(1966年)」を手掛けた。そこに共通して現れるのは「行動主義の権化」としてのアクの強いキャラクター群…

    *そしてスターウォーズ新三部作においてはアダム・ドライバーが演じたカイロ・レンについて多くの人間が「大菩薩峠」に登場する机龍之介の再来を期待した。

    *そこに仲代達矢が演じてきた様なある種のニヒルな人間像が浮かび上がってくる。
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また行動的な探偵が主人公であるが、ハードボイルドとは対照的に非情さを前面に出さず、穏健で道徳的な作品は「ソフトボイルド(soft boiled)」と呼ばれる。マイクル・Z・リューインアルバート・サムスン・シリーズやハワード・エンゲルのベニー・クーパーマン・シリーズなどがこれに当たる。
*「悪い奴ほどよく眠る(1960年)」で大藪春彦ニヒリズムのハンドリングに失敗した黒澤明ヒューマニズム山本周五郎的ハードボイルド概念の導入によって「用心棒(1961年)」「椿三十郎(1962年)」「赤ひげ(1965年)」を成功させる。

そんな感じで以下続報…