「諸概念の迷宮(Things got frantic)」用語集

本編で頻繁に使うロジックと関連用語のまとめ。

【用語集】「バーバラ・ウォーカー流フェミニズム」の基本パラダイム。

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ラッサールの歴史段階発展説では財産私有の歴史の第一段階は「政教一致の原資共産主義体制」とされ「教皇の領主化」などを経て政教分離が起こって第二段階封建時代=領主が領土と領民を全人格的に代表する農本主義的権威体制」への推移が進みます。

その重要な契機となったのがアビニョン虜囚事件(1309年~1377年)だったとされています。

  • 時はまさにゴシック時代前期(12世紀~13世紀)。11世紀に始まった十字軍運動に連動する形で進行した産業振興が当時なりに伝統的地域共同体の破壊をもたらす。

  • これに抵抗する形で(まさしく経済的発展の中心地となった)イタリアやドイツの諸都市では、まさにその恩恵を受けて登場した都市新興富裕層の間で聖書の「使徒行伝」における使徒の質素な伝道生活を理想視する聖堂参事会(Capitulum)での財産共有運動が勃発し、フランチェスコ修道会(1210年~)やドミニコ修道会(1216年~)の創設に至ったのである。

しかし実際には古代においても政教分離自体は起こり得たのです。

  • 例えば古代エジプト文明に第一中間期(紀元前2180年頃~紀元前2040年頃)をもたらした「オシリス革命」。それまでファラオが独占していた「死後の冥福を祈る秘術」が在野に「死者の書」なる形で流出し、冥界王オシリスを信奉するオシリス教団が成立。さらにはその「地上の代理人配偶神イシスへの信仰が台頭し、ファラオの権威を担保する様になる。

 一方、古代メソポタミア文明においては地母神イシュタルがその役割を果たす様になり配偶神ドゥムジが現生と冥界を往復する豊穣祈願祭が営まれた。

  • どうして英雄ギルガメシュイシュタルの求愛から逃げまくったのか?なまじ受けると「本当に平等である必要はないが、領民に不満感が生じたら生贄に殺される」使い捨ての国王の責務を押し付けられると知っていたからであった。

  • ケルト神話の英雄クー・フーリンが「地母神モリガンの求愛を拒絶し抜くのも同様の理由。イシュタルにもモリガンにも戦争神の側縁があり、彼女達に選ばれる事は戦争遂行者として使い捨てにされる事をも意味していたのであった。

  • その一方でメソポタミアにおいて神殿宗教と祭政一致体制に立脚する都市文明が衰退した後現れた(おそらくオシリス信仰同様、在野で芽生えた)ネルガル信仰においては地母神の役割が「地底に拘束された冥界神エレキシュガルに変形して縮退し、その「地上における代理人」となった破壊神ネルガルが傍若無人に暴れ回る展開を迎える。かかる変遷過程が無駄にエロくて下世話な神話で説明されるのが特徴。アナトリア半島に伝わってヘラクレス神話に原型を供給したともいわれる。

とまぁ、ここまでがフレイザー金枝編(The Golden Bough,1890年~1936年)」にいくらでもエピソードが載ってそうな王権説話の世界。

これらの神話展開を「家父長制が家母長制に勝利していく過程」と捉え「人類本来の姿=家母長制への回帰」を悲願するのがバーバラ=ウォーカー系ウルトラ・フェミニズムの基本パラダイムとなります。

要するに神話とは実際にはおそらく水面下で展開した「神官団内部における果てしない党争」の射影に過ぎず、この歴史段階において権力闘争はそういうディスクールでしか語りえなかったと考えるのです。

そうした歴史展開が「政教一致の原資共産主義体制」から「封建時代的農本主義」への時代変遷に伴ってだけでなく「政教一致の原資共産主義体制」の枠内すら起こってきたと考えたのが慧眼といえば慧眼とも?