「段階的発展説」そのものにも歴史があります。
アメリカ独立戦争(1775年~1783年)やフランスにおける革命戦争(1792年〜1802年)やナポレオン戦争(1803年〜1815年)と王党派イデオロギー動揺の時代が続いた後…
復古王政全盛期となったウィーン体制(ウィーン会議(1814~1815年)~1848年革命(1848年~1849年))下で王党派イデオロギーを再建したのがヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel,1770年~1831年)でした。
その中核を為したのが時代精神(Zeitgeist)論だったのです。
要約
一般にはある時代の哲学、文学、芸術などの作品に共通するその時代の人間の精神態度を指す。たとえばルネサンスの時代精神は何かといった形で問題にされる。
- 時代精神(Zeitgeist)という言葉自体は、ドイツではヘルダーが1769年に初めて使ったといわれており、ゲーテも『ファウスト』のなかなどで用いている。
- 時代精神を歴史の過程と結び付け、それを「個々の人間精神を超えた普遍的世界精神が歴史のなかで自己を展開していく各過程でとる形態」とみたのが、ヘーゲルであった。ヘーゲルはそれをさらに民族精神と結び付け、東洋、ギリシア、ローマ、ゲルマンの4段階に区分する。
- なおコントは、子供から大人に至る個人の精神の成長過程との類比で、古代から近世への人間精神の発展段階を神学的、形而上(けいじじょう)学的、実証的の3段階に分けたが、これも時代精神の一種の区分とみることができよう。
- また唯物史観の立場からすると、時代精神はイデオロギーであって、それはそれぞれの時代の経済的構造に依存していることになる。
ヘーゲルやコントにあっては、歴史の進歩とともに時代精神も進歩すると考えられているが、19世紀の歴史主義になると、時代精神はそれぞれの時代において完結した1回限りのものとされ、歴史における人類の進歩という思想は色あせ、それにかわって歴史的相対主義が登場する。
ヘーゲルの「段階発展説」
- 東洋的民族精神
- ギリシア的民族精神
- ローマ的民族精神
- ゲルマン的民族精神
とはいえ、かかる小康状態は1848年革命(1848年~1849年)によってあっけなく吹き飛んでしまうのです。