「諸概念の迷宮(Things got frantic)」用語集

本編で頻繁に使うロジックと関連用語のまとめ。

【コンピューターが実用化されて以降の数理モデルの歴史】「そして最後に実存不安だけが残った」?

その発明以降、コンピューターはテクノロジーとしてのそれ自体の進化だけでなく「かかる概念が存在する事による想像力の進化」も促してきたのでした。

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概要

ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムが「ソラリスの陽のもとにSolaris,1961年、映画化1972年、2002年)」の中で「(当時共産主義社会を技術的停滞に追い込みつつあった神人同形論Anthropomorphism/アントロポモルフィズム)」を批判。その対極的存在、すなわち「人間の思惑が一切届かない神秘的存在」として惑星ソラリスを設定。この発想がストルガツキー兄弟の「丘の上のピクニック/願望機1977年)」における「異星人の足跡が発生させた神域」という設定などに継承されていく。

こうした作品群はアーサー・C・クラーク幼年期の終りChildhood's End、1953年)」や「2001年宇宙の旅2001: A Space Odyssey、1968年)」にインスパイアされる形で主に共産主義諸国で執筆され(ドラッグを捨て「脳を再プログラミングする道具」コンピューターに入れ込んだ)1980年代以降のティモシー・リアリーの「元ヒッピーベトナム反戦運動の一環としての徴兵忌避でカナダに移住した)」ウィリアム・ギブスンなどへの働きかけを通じてによってTV系サイバーパンク文学ブーム開始に大きな影響を与えている。ただし正確な科学的知識に裏付けられていなかったので次第に時代遅れとなってインターネット普及が始まった1990年代以降は衰退。後世の再読に耐え得るのはJ.P.ホーガンやルディ・ラッカー程度で、前者の「仮想空間計画Realtime Interrupt、1995年3月、邦訳1999年)」が河原歴「ソードアートオンラインWebへの連載開始2002年〜、刊行開始2009年〜)」シリーズ、「未来からのホットラインThrice Upon a Time、1980年)」が「Steins;Gateシュタインズゲート、2009年〜)」シリーズの基本的世界観に強い影響を残した。

その一方でマイケル・クライトンが「アンドロメダ病原体The Andromeda Strain、原作1969年、映画化1971年)」を発表。現実的なコンピューティング技術に立脚したテクノロジー小説の嚆矢。

ちなみにテクノロジー小説は、アーサー・ヘイリーのグランドホテル形式群像ドラマの系譜に位置付けられる。 

 1980年代

第二世代人工知能研究の全盛期にして「人間の脳のエミュレーション」なるアプローチが行き詰まっていった時代。「人間の脳も量子コンピューターの一種かもしれない」という指摘は、まさしく福音といってよかった。

実際のコンピューター技術にあまり詳しくないニューウェーブSF世代やTV系サイバーパンク世代にとって「サイバー空間」「量子コンピューティング」「人工知能」といった諸概念は「科学技術の進歩が人間の意識の在り方そのものを変貌させていく世界」に想像力を遊ばせる格好の遊び場となったのである。

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 1990年代

人間知性の模倣」を指向した第二世代人工知能研究が行き詰まり「むしろ純粋な数理によって知識データベースを再構築する」第三世代人工知能研究へと推移していった時代。
*そして後者のアプローチについては当時から今日に至るまで「人間性に対する興味の放棄は許されない」「人間に似せない限り人工知能はやがて人類の敵に成長する」的な指摘が重ねられて来た。

年老いたニューウェーブSF世代やTV系サイバーパンク世代がテクノロジーの進化についていけなくなり、脱落を余儀なくされていった時代。

2000年代〜2010年代

インターネットが扱えるトラフイックが飛躍的に増大し、ビッグデータの概念が登場し、それに呼応する形で本格的に「人類の意識変容」が始まった時代。
*要するに「神人同形論(Anthropomorphism/アントロポモルフィズム)」の終焉が全く予想外の形で起こった。

そして最終的に「計算癖が全人格化した世界」だけが残る展開に。

 思えば遠くに来たもんだ?