ホブズボーム区分における「破局の時代(1914年 - 1945年)」「黄金の時代(1945年 - 1973年)」に該当。
ホブズボーム区分における「破局の時代(1914年 - 1945年)」
1914年のサラエボ事件をきっかけとしてヨーロッパを主戦場とした第一次世界大戦が勃発した。大戦は1000万人以上の犠牲者を出し1918年には終戦を迎えたが、その後も火種は残り続け、1939年にはドイツ軍のポーランド侵攻をきっかけとして枢軸国側と連合国側による第二次世界大戦の開戦に至った。戦場は全世界的規模へと拡大しておよそ2500万人の犠牲者を出し、更に1945年には枢軸国側で最後まで残っていた日本に対して人類史上初の原子力爆弾が投下され、ようやく終戦を迎えた。
ホブズボーム区分における「黄金の時代(1945年 - 1973年)」
先の大戦で超大国となったアメリカ合衆国を盟主とする資本主義・自由主義陣営とソビエト連邦(ソ連)を盟主とする共産主義・社会主義陣営によって世界は二分され、東西冷戦時代へと突入した。この対立構造によって経済発展競争や科学技術競争、宇宙開発競争などが起き、1969年7月20日にはアメリカのアポロ11号によって人類初の月面着陸が達成された。様々な変化をもたらしたこの黄金時代は、1973年のオイルショックによって終焉を迎えた。
欧州がベル・エポック時代の水準まで復興するのは1970年代に入ってから。戦後復興もマーシャル・プランに基づく米国資本投下の産物に過ぎなかった。そういう意味で相対的に「米国一強」が定まっていった時代でもある。
- 「資本主義未発達地域」に共産主義が浸透…日本や英国などと異なり「領主が領土や領民を全人格的に代表する農本主義的体制」からの脱却が不十分なまま資本主義的発展が始まると王侯貴族や聖職者といったランティエ(rentier=不労所得階層)がそのまま大ブルジョワ階層にシフトして貧富格差が致命的段階に到達しても放置される地獄絵図が現出する。こうした地域では(資本主義受容インフラが整うまで)共産主義体制を必要とするという理論が、旧共産主義国家の間では広まっているという(共産主義瘡蓋(かさぶた)論?)。
- 「総力戦」から「最終戦争」へ…第一次世界大戦が参加国全てに総力の投入を要求する過酷な展開となった余波。「最終決戦」を恐れながら待ち望むこの時期特有の緊張感を背景に共産主義や全体主義が台頭。
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いわゆる「冷戦」の時代…第二次世界大戦からの復興期や高度成長期は原則として「総力戦から最終戦争にかけての時代」における思想統制の余波という色合いが濃かった。
- 共産主義全盛期…ロシア革命(1917年)によるマルクス=レーニン主義成立からスターリン主義への移行、そしてフルシチョフのスターリン批判(1956年、1961年)と1960年代における新左翼運動の興亡を経てカンボジア・ベトナム戦争(1975年〜1977年)や中越戦争(1979年)といった共産主義国間戦争の時代に突入。ソ連崩壊(1991年12月)に向けての解体プロセスが静かに始まった。
- 開発独裁とアラブ社会主義の時代…第一次世界大戦に連動する形で大英帝国とオスマン帝国がアラビア半島の支配権を巡って争った。まさしく映画「アラビアとロレンス(1962年)」の世界。当時大英帝国は預言者ムハマンドの末裔たるハシーム家と「ワッハブ派におけるイマーム」サウド家の双方を支援しており、十字軍運動リベンジでシリアを欲しがったフランス(「暗殺教団末裔」アラウィー派を味方に引き入れアレッポ国とダマスカス国を建設)とドサクサに紛れてリビアを喰い取ったイタリアを尻目にサウド家がメッカとメディナの二大聖地を勝ち取りサウジアラビアを建国。バランスを取る為にハシーム家の王族達はそれぞれイラクとヨルダンの国王に据えられた。第二次世界大戦後、アジアではアメリカ後援下の反共独裁国家が工業化を志向し(開発独裁)、中東では1950年代から1960年代にかけてエジプト大統領ナセルが主導する「第三の道」路線が全盛期を迎える(アラブ社会主義)。ただし前者の多くが次第に破綻し、後者も第三次中東戦争におけるイスラエルへの大敗(1967年)とナセル死去(1970年)で行き詰まり穏便な親欧米派に主導力が移った。
ところでこのサイトにおいては以降、この時代区分においてはむしろ積極的に與那覇潤「中国化する日本:日中文明の衝突一千年史(2011年)」の以下の時代区分への乗り換えが行われていきます。
- 「効率化」を追求するあまり国家間の競争が全てとなった「総力戦体制時代(1910年代後半〜1970年代)」
- 先進国においては国家の存在意義がサービス化して以降、そうした動きを下支えしてきた商品生産企業やマスコミが「究極の自由主義は専制の徹底によってのみ達成される」ジレンマの体現者を志向して失敗を重ねていく「産業至上主義時代(1960年代〜?)」
共産主義全盛期を人類の黄金時代とする(それゆえに21世紀への足掛りを備えない)ホブズボーム歴史区分からの逸脱…